最高齢は91歳。トチの実で起業して廃れゆく集落を活性化させたおばあちゃんたち

古屋のばあちゃんたち

京都府綾部の山里の集落に平均年齢80代後半のおばあちゃんたちが現役でバリバリ働く作業所があります。
周辺でとれるトチの実でまんじゅうやおかきなどを商品化し、事業を展開しているとのこと。
最高齢は91歳のおばあちゃん。毎朝スクーターで出勤してくるそうです。
いったいどんなおばあちゃんたちなのだろう。
吉水女将の中川さんもよく知っているというので連れて行ってもらうことになりました。

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水源の里、古屋(こや)のおばあちゃんたちに会いに行く

あやべ吉水のある上林(かんばやし)地区からさらに7kmほど山奥に入っていた場所に、古屋(こや)と呼ばれる集落があります。古屋は、いわゆる限界集落で、現在は数えるほどしか人が住んでいないところ。

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▲こんな杉林の道をグングン進んで行きます。

谷川沿いに杉林の中を進んでいくと民家が見えてきました。
古屋の公民館だということですが、この中でおばあちゃんたちが絶賛作業中でした。

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中川さんは着くなり挨拶もそこそこ、嬉々として「何か手伝うことあるー!?」と叫ぶ。この人も70代だけど年齢をまったく感じさせない。しかし古屋のおばあちゃんたちはもっと上を行っています。
年齢なんて自動的に貼られるレッテルはこういう場所では無関係なのかもね。動ける、働けるのなら動いて働く。「もう歳だから・・・」と自分でレッテルを貼るのではなく、「まだ動けるから」とポジティブにとらえることでいくらでも仕事は生まれてきます。

朴葉(ほおば)もぎ取り作業のお手伝い。褒美のトチ餅まんじゅうが最高!

実はこの翌日、綾部住民のマラソン大会があり多くの人が訪れるため、古屋のおばあちゃんたちも出店ブースを設けてトチの実まんじゅうやおこわなどを販売するとのこと。
なのでいつもよりたくさん作らないといけないため、作業量も多かった。

僕らはおこわを包む朴葉(ほおば)の収集作業を手伝うことにしました。
朴葉の木の枝を山から刈り取って、大きめの葉っぱをもぎ取っていきます。
小さい葉っぱや破れていたり虫食いがあるものはダメで、大きくて形の良いものを選びます。
ダメな葉っぱをもぎ取ろうとすると、おばあちゃんから容赦なくダメ出しが飛んできます。
商品となる品物なので、妥協は許されない・・・と言ったら大げさかもしれないけど、おばあちゃんたちの仕事に対する熱心さを肌で感じることができ、作業が終わったあとはなんだか清々しい達成感がありました。

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▲朴葉の枝を作業場へと運ぶ。嬉々として作業を手伝う中川さん。

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▲綺麗で形の良い朴葉をその場で水洗い。大事な商品の材料となります。

作業のあとに、お茶とトチ餅まんじゅうをいただきました。もちろんおばあちゃんたちの手作りのまんじゅうです。
ほんのりとしたトチの風味、塩味のきいたアンコ、もっちり歯ごたえのあるまんじゅう。最高にうまかった。

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▲できたてのトチ餅まんじゅう。最高ッス!

明日は朝2時起きで作業開始!廃れゆく集落を自ら活性化させたおばあちゃんたちに脱帽

古屋は、樹齢500年から1,000年のトチの木が600本以上自生する世界的にも希少な地域。おばあちゃんたちは若かった頃、よく山に入ってトチの実拾いをする日常だったとか。

年月が過ぎ人も少なくなり、ついに限界集落の烙印を押された古屋。
変化のきっかけは綾部市が全国に先駆けて制定した「地域活性化のための水源の里条例」。廃れゆく集落を活性化して人の集まる場所にする取り組み。各地域の特徴を生かした物産の製造販売を地元の人たちの手で行い、徐々に活性化の機運も高まっているようです。

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古屋のおばあちゃんたちも「自分たちでできることはないか?」と会議を重ねて、昔からこの地域に根付いていたトチの実を使った食べ物を特産品として販売しようと立ち上がったのだそうです。
すでに80歳を超えていたけど、年齢を理由に立ち止まる人たちではありませんでした。このチャンスを逃さず実際に行動に移し、自分たちでトチの実製品の加工・製造を行って特産品として商品化。販路も増やし各地で販売を行っています。

灰を使ったトチの実のアク抜きは熟練の技を必要とするらしいです。後世に残すべき伝統技能として京都府が定めた「農の匠」という称号もおばあちゃんのうちの一人が認定されています。
このパワフルおばあちゃんたちの噂を聞きつけてこの地に訪れる人も増え、トチの実を保護するボランティア隊も結成されて若い人たちの姿も多く目にするようになりました。

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▲名物とも言える、91歳のおばあちゃんのバイク出勤。

明日の出店に備えて翌朝2時(!)に起きて作業を再開するという。うーん、どこまでもパワフル。
20代ー40代で仕事がないからニートとか言ってる人はまずこの場所に訪れてトチの実拾いの手伝いでもしてみたらどうでしょう。

心と体がしっかりしていれば年齢は関係ない。人生の行く先はいくらでも変えられる

さて、その翌日。
あやべ温泉周辺には普段と違ってものすごい車列と人の数!
綾部の住民が集まって、この場所でマラソン大会が開催されます。

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大会に伴って、様々な出店ブースなどが設けられ、古屋のおばあちゃんたちも発見!

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▲青ジャンパーの男性が古屋の自治会長の渡辺さん。おばあちゃんたちを支える縁の下の力持ち的存在です。

昨日のお手伝いのお礼にと朴葉に包まれたおこわを3つ頂いてしまいました!うわーん!

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▲昨日もぎとった朴葉に包まれたおこわ。あとでおいしくいただきました。

91歳のおばあちゃん、ふと見ると、肩にかわいいポシェットを下げています。
それ、いいですねー!と言うと。
これ、自分で作ったんよ」と。

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もうなんだか、ほんとに手作りの味わいのあるすてきなポシェット。
必要なものは手作りして自分のお気に入りにしてしまうところ、失礼な言い方かもしれないけど、かわいらしさを感じてしまいます。
ついつい「○○歳のおばあちゃん」と年齢を引き合いに出してしまうけど、ほんと年齢っていうのは一つの目安に過ぎず、歳を重ねても心と体がしっかりしていれば何歳だろうと関係ないのだなーと思ったりしました。

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まさか彼女たちも80歳を過ぎてから自分たちで起業するなんて考えていなかったことでしょう。
ちょっとしたチャンスと実行するエネルギー、そしてたゆまぬ向上心。それらがあればいくらでも人生の行く先を変えることができるんです。
それにはもちろん日々の地道な作業の積み重ねが大切なんだけどね。
ほんとに短い間だったけど、古屋のおばあちゃんたちからいろいろ学ばせてもらいました。